私の父は「ラピタ」という雑誌を良く読んでいた。
それは車や時計、カメラ、文具、服、模型飛行機から鉄道まで当時の親父達が食いつきそうなホビーを扱っていた雑誌だった。
父が寝る前に「ラピタ」を読むので、私も父の隣に横になって一緒に読んだ記憶がある。
あの雑誌の「(確か)ゴールドフィッシュ(だったと思う)」という冒険小説は親父達を子どもに戻し、ハラハラドキドキの大冒険に連れて行ってくれる魅力があったのではないだろうか。
雑誌の影響なのか、父もコンタックスやキャノンのカメラを持って家族と一緒に良く出かけた。
わざわざ県外までSLに乗りに行ったものだ。
SLに乗ったら乗ったで列車好きの親父達がわんさかいた。
だいたいが家族連れだが、中には根っから鉄道が好きな人なのだろう、一人で列車に乗って楽しげに車内の様子や窓の外を通り過ぎる景色、SL独特の座席の座り心地を楽しんでいる人もいた。
目が合うと、無邪気な私に列車の魅力を語ってくれたりしたもので、列車が駅から立ち去る時はホームに集まった子どもたちの邪魔にならないようカメラで列車を撮っていた。


最近のオタクはマナーの悪い人が目立つらしい。
公共の場なのに露出の激しい格好をしたり、子どもを押しのけて撮影したり、グッズの買い占めをしたり、中には暴言を吐きまくる人もいるとかで。
こういうオタクが増えた原因としてメディアによる安易なブームの巻き起こしやオタクの引きこもり化が挙げられている。
昔のマニアは自分の趣味は自分で見つけ、趣味の合う人同士でコミュニティを作り、共通のマナーを作り楽しんでいたそうだ。
ところがネットの普及で簡単に撮った写真を自分のサイトに上げ、他人に情報を共有できるようになるとわざわざコミュニティを作って情報共有や団体行動をせずとも簡単にオタクになることができるようになった。
私も、周りにいた子どもがドン引くくらい自己主張の激しい、非常にマナーの悪い方に出会ったことがある。 


自己主張の強い、周りが見えていないマニアは単なるマニア紛い。
昔私がSLの中で出会ったマニアの人達は紳士的で社交的だった。
ホビーに親しむ大人はカッコ良く、いつか自分もあんな大人になりたいと感じたものだ。
老後の第二の人生が雑誌で流行り始めた頃から、ホビーは商品へ変わり、趣味に没頭するおじ様達が減った気がするのは私だけだろうか。
現在オタクの人達には、ぜひ将来マニアになってもらいたいものである。



※  「ラピタ」は「Lapita」に変わっていたそうです。どうも「Lapita」後は私の父も私自身も雑誌に魅力を感じなくなってしまいました。あのままカッコイイマニア路線を貫いて欲しかったのですが、ちょっぴり残念です。