先日六十歳後半になる方と酒の席ながら対談をした。 
その方は高齢ながら非常に対等な立場で話を聴いてくれた。
年配の方にありがちな上から目線の発言は一切無く、好奇心を持って若者である私に質問をしてくれたのだ。
対談の最中、彼から「最近の若者はなぜ消極的なんだろう。やっぱりネットのせいなんだろうか?」という発言があった。
私は慌ててそれを否定し、今まで出会ってきた様々な若者の体験談を元に自分なりの答えを出した。
私が非常に驚いたのは、ここまで若者と対等に話ができる大人でさえネットのせいにしてしまうことだった。
本当に若者はネットの影響を受けているのだろうか。


最近朝日新聞で中高生のネット依存が取り上げられていた。
記事の見出しは「ネット依存中高生52万人」。
全国的にネット依存になっている未成年が多いと思わせるタイトルだ。
だが、記事の中身をよく読んでもらいたい。
調査に協力した中高生10万人の内、依存の疑いが強いのは全体の8%だったと書かれている。
52万人というのはその8%を全国の中高生の数に換算した場合の仮定の数字なのだ。
要するに、「最近の若者は……!!」と叫ぶほどネットに依存している若者は多くないのである。


 一時期「ゲーム脳」なる言葉が流行ったように、最近は若者を語る際に「ネット依存」という言葉を用いるようだ。
一部ではネットを使うほど、物事に対して消極的になるとさえ言われている。
しかしよく考えてもらいたい。
今どきネットを使っている人なんてたくさんいるだろう。
Facebookを立ち上げたマーク・ザッカーバーグだってネットを多用している。
果たして彼は消極的な人物に見えるだろうか? 


今回の朝日新聞の記事、「ネット依存の改善法としてネット以外の趣味を見つけるべきだろう」と書かれているが、全体の8%の人達がネットに依存している事実を見てそれだけしか思いつかないのだろうか。
私なら家庭環境やいじめが原因でネットに逃げざるを得ない状態を疑う。
根拠もないのにネットのせいにして議論を終わらせる新聞。
それを鵜呑みにして若者と対話せず、勝手に「消極的」、「草食性」などとカテゴライズしてくる大人。
大人の言葉を借りるなら「最近の大人がダメなのはテレビや新聞の影響を受けている!!」からなのだろう。